急にお金が必要になった時に現金を用意する方法として、年金を前借りする方法があります。
「65歳以上にならないともらえない年金を前借りできるなんて最高!」
と考える人もいますが、いくつか注意点もありますので、年金を前借りする方法や金利、前借りする際の注意点などについて見ていきたいと思います。
年金の前借りとは
年金の前借り制度とは、正確には年金を担保にお金を借りることで、専門的な言葉でいうと「年金担保貸付事業」を利用することです。
将来もらえる年金を担保に入れて、年金額の範囲内でお金を借りることができます。
年金担保貸付事業は、「独立行政法人福祉医療機構」という機関が行っていて、国民年金や厚生年金を担保にお金を借りられるのは唯一「独立行政法人福祉医療機構」です。
他の金融機関や怪しい業者から、年金を担保に貸し付けるとか、年金の前借りを手伝うなどと言われた場合は、確実に違法業者となりますので、絶対に関わってはいけません。
年金前借りの対象者
年金担保貸付事業を受けられるのは、公的年金の年金証書を持っていて、現在年金を受給中の人のみです。
ですので、年金をまだ受給していない現役世代の人は年金を前借りすることはできません。
年金の受給開始前の人は前借りすることができず、あくまですでに年金を受給中の人が一時的な支出をカバーするために利用する貸付という位置づけになります。
対象となる年金の種類は国民年金、厚生年金、労働者災害補償保険の年金となっており、老齢年金、障害年金、遺族年金いずれの年金を受給している人でも利用することができます。
公務員など共済に加入している人は「株式会社日本政策金融公庫」が提供する恩給・共済年金担保融資という制度を利用することになります。
前借りできる金額
借りられる金額は、年間年金支給額の80%を上限として、10万円から200万円(生活必需物品の購入80万円)となります。
また、年金担保貸付における融資の資金使途は「保健・医療、介護・福祉、住宅改修、冠婚葬祭、生活必需物品の購入などの支出のために一時的に小口の資金が必要な場合」となっていますので、むやみやたらに借りることはできません。
やむをえない理由で、一時的かつ小口の現金が必要な場合に利用できる貸付制度となっています。
平成26年12月以降は資金使徒や必要額がわかる見積書を取扱金融機関で確認されるなど、制度の趣旨以外の理由での借入は難しくなっています。
前借りした時の金利
年金担保貸付の金利は年利1.9%、労災年金担保貸付の金利は年利1.2%となっています。
2%以下という超低金利でお金を借りられるのは大きいですね。
仮に年金担保貸付(年利1.9%)で100万円借りて、翌月に全額返済した場合の利息は・・・
100万円×1.9%÷365×30=約1651円
で、利息は1651円となります。
(実際は翌月に全額返済することはできませんが、参考まで)
年利18%とか20%の金利が多いキャッシングと比べると、かなり低金利で借りられることがわかります。
返済方法
返済は年金支給機関から独立行政法人福祉医療機構へ直接年金を支払われる形で行われます。
つまり、返済は年金から行われ、返済分の年金を受け取ることはできません。
返済金額は1万円以上1万円単位で定額返済していくことになり、上限の返済金額は年金支給額の3分の1以下となります。
ですので、すべての年金を受け取れなくなるということはなく、最低でも年金受給額の3分の2は手元に入ってくることになります。
とはいえ、返済分の年金は自分の手元に入ってくることなく、確実に返済に充てられますので、今の年金額で生活がギリギリという人は、利用は特に慎重に検討する必要があります。
年金を前借りする方法
年金担保貸付を利用するには、独立行政法人福祉医療機構の代理店になっている銀行や信用金庫の店舗で手続きをすることができます。
いつも年金を受け取っている金融機関で手続きするのがもっともスムーズです。
ただし、ゆうちょ銀行や農協、労働金庫は代理店になっていないため、手続きができません。
手続きは、店舗に備え付けられてある借入申込書があるので、必要事項を記入して提出することで手続きを進めることができます。
必ず本人が手続きをする必要がありますので、注意が必要です。
必要書類は
・借入申込書
・年金証書
・現在の年金支給額を証明する書類(年金振込通知書など)
・印鑑証明書
・本人確認書類
・見積書(資金使徒や必要額がわかるもの)
などが必要となります。
年金を前借りする際の注意点
- 現役世代は前借りすることはできない
- 返済し終わるまで年金を受け取れない
- 年金前借りを装った悪質業者がいる
現役世代は前借りすることはできない
年金担保貸付を利用することで年金を前借りすることができますが、いくつか注意点もあります。
まずは「前借り」と言っても、今年金を受け取っていない現役世代の人が将来の年金を前借りすることはできません。
年金担保貸付制度は、すでに年金の受給が始まっている人向けの貸付制度ですので、現役世代が利用することはできない点は理解しておかないといけません。
現役世代の人は別の方法でお金を借りる必要があります。
返済し終わるまで年金を受け取れない
また、返済は年金の支給金融機関から独立行政法人福祉医療機構へ直接支払われますので、返済が終わるまで一部とはいえ年金を受け取ることができなくなります。
返済金額は1万円単位で設定可能なので、受け取らないと困る年金については返済額に含めず、無理のない返済計画を立てる必要があります。
年金前借りを悪用した悪質業者がいる
最も注意したいのは、年金の前借りを謳う悪質業者がいる点です。
「年金を担保にして即日融資可能」などと謳う業者もいますが、間違いなく違法です。
上述した通り、年金を担保にして貸付ができるのは独立行政法人福祉医療機構のみとなっています。
それ以外に年金を担保にした貸付は、共済を担保に貸付している「株式会社日本政策金融公庫」のみです。
それぞれ代理店はありますが、銀行や信用金庫などの有名な金融機関のみですし、取り次ぎや代行などで手数料がかかることは一切ありません。
「年金の前借り」という甘い言葉で近寄ってくる悪徳業者には、絶対にひっかからないように注意しましょう。
まとめ
年金の前借りついて見てきました。
内容をまとめると以下のようになります。
- 年金を担保にしてお金を借りる年金担保貸付がある
- 対象者はすでに年金を受給している人
- 年金をもらっていない現役世代は前借りできない
公的年金を担保にしてお金を借りることができる「年金担保貸付制度」があります。
1.9%の低金利で200万円まで借りることができるので、医療や介護、冠婚葬祭などで急にお金が必要になった時に、低金利でお金を借りることができるのは便利ですね。
ただ、年金担保貸付を利用できるのは、年金の受給が始まっている人のみで、年金を受給していない現役世代の人は利用することができません。
また、資金用途や金額は厳しく制限されており、借りる際には資金用途と金額がわかる見積書の提出が必要となります。
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